糖質を上手に摂ると、理想とする パフォーマンスをより長く続けることができる!その方法とは?

糖質を上手に摂ると、理想とする パフォーマンスをより長く続けることができる!その方法とは?

運動するときに、自分の理想とするパフォーマンスを保つためには、エネルギー源としての糖質の補給がとても大切です。運動する前・運動中、そして運動後に、適切な方法で糖質を摂ると、パフォーマンスの維持や発揮に役立ちます。今回は、糖質がスポーツする人にとってなぜ必要なのか、糖質の役割をしっかり学んだ上で、運動時の摂り方についてもご紹介します。

1.運動時のエネルギー源として大切な糖質とグリコーゲン

私たちのカラダでは、運動の際に糖質や脂質が主なエネルギー源として使われます。特に糖質は、運動の強さが上がると多く使われ、カラダの中の糖質が減ってくることでバテてしまうのです。

食べ物から糖質を摂って、カラダの中に吸収されると、血液によって全身に運ばれ、筋肉や脳にも行きわたります。図1のように、食べ物から摂った糖質は、安静にしている時には、筋肉でグリコーゲンという状態となって蓄えられ、運動時にエネルギー源として利用されます。

また、肝臓にもグリコーゲンとして蓄えられていますが、運動中に血液中のグルコース(血糖)が減ってくると、グルコースへと戻され、血糖値を保つために使われます。
このグリコーゲンとして蓄えることのできる量は、人それぞれ筋肉量などによって異なっていますが、アスリートでは一般の人よりも多くおよそ2,000kcal(18~29歳の男性があまり活動しない日に必要とされるエネルギー量は2,300kcal)のグリコーゲンを蓄えられることができると言われています。

但し、カラダに蓄えられるグリコーゲンの量は、脂質(脂肪)と比べると圧倒的に少ないのです。一般成人の体脂肪率は約15%であり、体重60kgの人で約9キロもの脂質、約65,000kcal(1gあたり7.2kcalとして計算)を蓄えていることに比べると、30分の1以下にしかならないのです。

図1

このようにカラダの中に蓄えられているグリコーゲンの量はとても少ないため、運動を長時間行った場合、その終盤にグリコーゲンがなくなってしまい、パフォーマンスが落ちてしまいます。

例えば(図2)、マラソンランナーがフルマラソンに参加した時、レースの終盤になると走る速さが下がっていました。このランナーたちはスタートから12kmまでは時速12~13kmで走れていましたが、16kmからだんだんスピードが落ちてきて、36kmを過ぎた時点では、時速11kmを切るまでスピードが落ちてしまったのです1)

また、サッカー選手が試合中に走ったスピードを測定したデータもあります。時速16~22kmと相当速いスピードで走った距離を測ったところ、特に試合終盤(ラスト15分の時間帯)になると、速いスピードで走った距離が試合の前半や後半開始直後の時間帯に比べ短くなってしまいました2)

図2

1) Billat VL et al, ScientificWorldJournal. 2012 2012 810859
2) Mohr M et al, Scand J Med Sci Sports. 2010 Oct 20 Suppl 3 125-32

このように、運動を長い時間続けておこなうと、終わりごろにはパフォーマンスは下がってしまいますが、これはカラダの中のグリコーゲンが使われ、無くなっていくことで起こると考えられています。

2.効果的な糖質の補給法とは?

ペースダウンやパフォーマンスの低下を防ぐためには、カラダのなかのグリコーゲンが運動中に枯渇しないように、まず普段の食事からしっかりと糖質を摂ってできるだけ多くグリコーゲンをカラダの中に貯めておくことが必要です。糖質は、米や小麦などのいわゆる穀類などに多く含まれています。

2016年に発表されたアメリカスポーツ医学会(ACSM)のガイドラインでは、1日あたり1時間以内の中等度の運動を行う場合、体重1kgあたり5~7g、1~3時間くらいの強めの運動を行う場合には、6g~10g程度の糖質を毎日摂ることが奨められています3)。つまり体重60kgの人が1~3時間くらいの運動を行う場合、1日に360g~600g(ご飯ならお茶碗でおよそ6~11杯分に相当)摂ることが奨められています。

また、運動の前後や運動中にも、以下のような点に注意しながら糖質を摂取することがすすめられています。スポーツする人がおかれている状況や、本人の体調、そして行うスポーツの種類などによって異なりますが、以下のポイントを目安にするとよいでしょう(図3)。

運動前: ACSMのガイドラインでは、運動1~4時間前までに体重1kgあたり1~4gの糖質(体重60kgの場合60~240g)を摂ることが奨められています。

運動中:運動時間が1~2.5時間の持久系スポーツでは1時間あたり30~60gの糖質を摂ることが効果的です。スポーツの種類や試合・練習がどれくらい続くのか、そして当日の体調なども考えて、一度に多く摂ることはせず、何回かに分けてこまめに摂ることをおすすめします。

運動後:試合や練習などが1日の中で続けてある場合には直ぐに糖質を補給し、カラダの中のグリコーゲンを回復させることを考えましょう。翌日に向けては、グリコーゲンを回復させることを意識して、1日あたりの糖質の摂取量を考えて、食事から十分に補給しましょう。

図3

3)Thomas DT et al, Med Sci Sports Exerc. 2016 Mar;48(3):543-68

3.まとめ

運動の際の大切なエネルギー源である糖質についてのポイントを以下にまとめます。

  • ・糖質は大切なエネルギー源であり、筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられている。
  • ・きつめの運動では筋肉の中のグリコーゲンがたくさん使われて減ってくる。
  • ・特に、長時間の運動の終盤では、グリコーゲンがなくなり、疲れの原因となる。
  • ・運動中にグリコーゲンがなくならないように毎日の食事で糖質をしっかりと摂りましょう。
  • ・運動の前後や運動中にも積極的に糖質を補給しましょう。

運動時の糖質の役割を理解して、糖質を積極的に摂り、満足のいくパフォーマンスを続けられるようにしましょう。

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〈監修者〉寺田 新(てらだ しん)

寺田 新(てらだ しん)
早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了(博士(人間科学))。日本学術振興会・PD特別研究員、ワシントン大学医学部・研究員、三共株式会社・研究員、早稲田大学先端科学健康医療融合研究機構・講師、日清オイリオグループ株式会社中央研究所・主管を経て2012年より東京大学大学院総合文化研究科・准教授。特定非営利法人日本スポーツ栄養学会理事、日本スポーツ栄養研究誌編集委員長などを務める。

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