ベストなコンディションにするための食事と栄養(パートⅢ:筋肉のリカバリー)

ベストなコンディションにするための食事と栄養(パートⅠ)

より良いパフォーマンスを発揮するためにはカラダを良い状態に整えなければなりません。スポーツではよく『コンディション』や『コンディショニング』という言葉を使いますが、みなさんはその言葉の意味を考えてみたことはあるでしょうか?

 

『コンディション』は言葉の意味の通り、その時の「状態」を示す言葉です。コンディションは、トレーニング内容、食事・栄養、精神面などの影響を受け、日々変化しています。『コンディショニング』は、スポーツにおいて、より高いパフォーマンス発揮、より良い成績を目指して、カラダや精神を整えることを意味しています。つまり、「ベストパフォーマンス」はコンディショニングを行うことで得られると言っても過言ではないでしょう。

 

このコンテンツでは、様々なコンディショニングに対して、食事・栄養がどのように関わるかを学んでみましょう。そして、自分に必要なコンディショニングを考え、取り入れてみましょう。

3.筋肉のリカバリーとコンディショニング

ハードな運動をすると筋肉は疲労(筋疲労)します。スポーツを行っているみなさんは、「筋肉が疲労している」という感覚は常に体験していると思いますが、その意味を理解しているでしょうか?

筋疲労は、身体活動によって引き起こされる筋力や筋パワー発揮能力が低下した状態と言えます。筋疲労の原因は様々ありますが、スポーツ栄養学的な視点では、筋タンパク質の回復遅延、エネルギー不足 (グリコーゲンの枯渇)、脱水などが考えられます。したがって、筋疲労を速やかに回復する、リカバリーすることがパフォーマンスの向上や維持に重要となります。

運動によって、筋肉内のグリコーゲンは大きく消費され、貯蔵量が減少します。この状態が長く続くと、疲労感を感じることになります。部活の後、疲れて帰宅し夕食を食べずに寝てしまい、たくさん睡眠をとったにも関わらず、朝にカラダがだるいという経験をしたことのある方は多いのではないでしょうか?

これは、枯渇した筋グリコーゲンを回復させずに (夕食で糖質を補給せずに)寝てしまったことから引き起こされた疲労です。したがって、グリコーゲンを速やかに回復させるために十分な量の糖質を補給することが大切です。また、運動後のグリコーゲン回復を目的とした食事では、糖質とたんぱく質を十分に摂ることで効率が上がると言われています。

運動後のたんぱく質 (アミノ酸) 摂取は、筋肉を増やすだけでなく、ダメージを受けた筋のリカバリーを促す意味もあります。例えば、激しいトレーニングをした後の筋肉痛 (遅発性筋痛) に対して、アミノ酸の摂取が効果的である研究例もあります。タンパク質で出来ている筋肉の回復には、たんぱく質を十分に供給する必要があります。たんぱく質を十分に供給してあげることで筋タンパク質の合成を高めることができるのです。

練習によりカラダのエネルギーがなくなった状態で、次の食事までの時間が空いてしまうと、筋肉のタンパク質がエネルギー源として使われてしまう割合が高まります。この状態を防ぐため、練習後に、おにぎり、サンドイッチ、魚肉ソーセージ、ヨーグルト、バナナなどを組み合わせ、糖質とたんぱく質が含まれるように補食を摂ることが良いでしょう。

筋肉のコンディションを落とす要因として忘れがちなのが、水分補給です。エネルギーやたんぱく質の補給には意識は向きますが、水分摂取に意識が向かず脱水になってしまうことがあります。筋肉内には多くの水分が貯蔵されており、様々な物質の循環に使用されています。したがって、水分摂取不足や脱水によって筋肉内の水分が減ると、物質の循環が滞り、筋肉が動かしづらくなると考えられます。

「食事はしっかりと摂っているし、休息も取っているのになんだか筋肉がだるい」と感じるときには、脱水を疑ってみましょう。脱水は練習以外でも起こるリスクがあるので、日常的に意識をして水分を摂取しておくと、体水分を十分に維持することができます。練習などで多量に汗をかかない場合には、スポーツドリンクでなく水やお茶などをこまめに摂取する程度で十分です。しっかりと水分を摂取して、筋肉に潤いを与えましょう。

筋肉のコンディショニングは、ベストパフォーマンスの発揮に重要です。食事や補食、水分摂取の仕方を見直すことで、練習後の筋肉のリカバリーを促し、翌日も良いパフォーマンスが発揮できるように準備をしましょう。

※運動後の筋肉のリカバリーのヒントはこちら

〈監修者〉佐々木 将太(ささき しょうた)

佐々木将太(ささき しょうた)
北海道文教大学 人間科学部 健康栄養学科 講師。
京都府立大学大学院生命科学研究科応用生命科学専攻博士後期課程単位取得退学 (2011) 、博士 (学術) 、帯広大谷短期大学助教を経て、2019年より現職。公認スポーツ栄養士、管理栄養士。月刊スキーグラフィック「スキーヤーのための栄養学」監修。

これまでにスピードスケート、アイスホッケーに取り組むジュニアおよび女子アスリートを中心に栄養サポートを実施。現在は、管理栄養士を目指す学生と高校野球および陸上競技選手に栄養サポートを実施中。展開の途上ではあるが、寒冷環境で行うスポーツに特化した栄養摂取方法を模索した研究にも取り組む。スポーツ栄養分野の研究と現場の架け橋を目指す。

関連記事関連記事