[特別対談]登山後編:山登りはチャレンジ精神と自分で判断していく力が必要

[特別対談]登山後編:山登りはチャレンジ精神と自分で判断していく力が必要

自分なりのペースで、年齢を問わず楽しめる登山。自然の中に入り込み、好きなスタイルで非日常を満喫できるのは魅力のひとつです。ただ、自由であるからこそ、事前準備やレベルに合わせた栄養補給が重要になります。

 

今回は登山家の花谷泰広さんに、豊富な経験から感じたことや、山登りで気を付けたいポイントなどをインタビュー。“登山界のアカデミー賞”ピオレドール賞も獲得した花谷さんが目指す未来とはどんなものなのか。アミノ酸のエキスパートである味の素(株)の山田敏之さんが、そのマインドを聞き出します。

[インタビュー]
登山家 花谷泰広さん
味の素㈱ 山田敏之さん

ワクワクするのは、誰も登っていない山を登るとき

――花谷さんは海外の登山で大変な思いをされた経験もあると思いますが、それでも山を登り続ける理由を教えてください。

花谷:知らなかった世界が見られるからですね。個人的には、誰も登っていない山やルートを目指すのが、やはり1番ワクワクします。事前情報がなくて、現地に行って本物を見てみないと分からない部分がたくさんある。その場で山をどう登っていくのか、自分で決めて進んでいくのがすごく刺激的ですし、楽しいです。

山田:山登りで必要なチャレンジ精神は、現代人にとっても重要なマインドだと思います。積極的に挑戦したからこそ学べた、大切なことはありますか?

花谷:山登りは、自分で考えて決断していくことの連続なんですよね。答えがあるわけでもないし、それが仮に失敗だったとしたら、間違った選択によって、命を落とす危険性もある。そこも背負って、自分なりに決めた道を行くのが一番大事な気がします。普通に生きていると、命をかけた判断をする機会なんてあまりないと思うので、生きるために必要な決断する力が身につくのは重要なことだと思います。

過酷な登山は、食べることよりも飲むことでエネルギーを摂取する

――過酷な状況であるほど、栄養補給もより重要になりますよね?

花谷:登山が過酷になればなるほど、持っていく装備はすごく厳選しています。できるだけ装備を軽くしなければならないので、普段の登山で持っていくような食料も、持っていけなくなります。軽くて栄養効率の良いものに絞られていきますね。

高所だと呼吸が荒くなって体から水分が奪われるため、食べることよりも飲むことの方が重要になります。キャンプ地についたら、水はないので雪を溶かし、お湯や水にしてからスポーツドリンクを入れて飲む。インスタント味噌汁などを作る時もありますね。とにかく食べるよりも、飲むことばかりになってしまうので、極端な食生活になっているとは思います。

山田:食べるより、飲むほうが重要になるということでしょうか。その状況下で、より効率的にエネルギーを補給するために心がけていることはありますか?

花谷:やはり食欲がなくなるので、特に固形物が喉を通らなくなりますね。だから様々なパターンで味や品を変えて、栄養摂取や水分補給をしています。厳しい環境下でも、できるだけエネルギーを切らさないように摂取することは、すごく大切だと思います。

限られた選択肢の中、リカバリーではアミノ酸サプリメントが効果的

――エネルギーの摂取同様に疲労の軽減も大切ですが、リカバリーでは何を意識していますか?

花谷:限られたことしかできないので、アミノ酸のサプリメントを活用しています。登山中でも摂取できますし、1日の登山が終わった後もしっかりサプリメントでアミノ酸を摂ることが、リカバリーにも大きく役立ちます。翌日も早朝から登山に出る場面が多いので、次の日に少しでも疲れを残さないため、運動した後をどう過ごすかは重要になります。

山田:登山中や登山後は、栄養摂取と睡眠も大事な要素になると思います。しっかり休養を取られていますでしょうか?

花谷:正直なところ、ゆっくり休める場所があればいいのですが、登山が厳しくなればなるほど寝られないですね。横になって寝られるだけ良くて、座ることしかできない状況もあります。そこまで行くと、いかに集中力を切らさず登れるかが問われるので、休める時は極力しっかり休みますが、あまり十分に休めることはないですね。ただ、どんな場面でも翌日に疲労を残さないというのが重要なテーマ。その点はすごく考えています。

環境保全できる仕組みを作っていきたい

――花谷さんは、自身が主宰するヒマラヤキャンプで若い登山家を育成されています。その想いを教えていただけますか?

花谷:僕自身、大学2年生の時に初めてヒマラヤに連れて行ってもらったのですが、その時は自分の技術が優れていたわけでもなく、ただ先輩たちが誘ってくれたのがきっかけでした。今は高齢化の影響もあって、山岳会はどんどん小さくなっている。結果的に、僕のように若い時から海外登山に行かせてもらえるケースが少なくなったのは、もったいないなと思っていました。

それで、初めての海外登山やヒマラヤ登山をやってみたいという人たちと一緒に、ヒマラヤに行くプロジェクトを始めたのです。目指している山は全て未踏峰。その山の難易度を重視するよりも、情報がないところを自分でジャッジしながら、前に進んでいく。それが本来の登山の楽しみだと思っているので、その点を意識した活動をさせてもらっています。

山田:参加した方からはどんな意見が聞かれますか?

花谷:参加者それぞれにバックボーンがあって、プロジェクト参加後はそのまま登山を続けている人もいれば、離れていく人もいます。ただ、みんな言ってくれるのは、『今までこういう機会がなかったから、参加できてよかった』という声ですね。それを聞くと、取り組んで良かったなと思います。

――花谷さんは、登山道整備などの社会課題にも取り組まれています。思い描く理想の未来とは、どんなものですか??

花谷:今後大きな社会課題になってくるのは、やはり自然資源の保全です。日本にはこれだけ山や海があって、みんな利用することに関心はありますが、未来に残していくことに関しては仕組みがないのが現状。例えばすごく広大な国立公園でも、国が定める保護官が一人しかいないことも。そんな現状を、できるだけ解決していきたいと思っています。

山田:最近は登山も人気になって楽しむ方も増えていますが、登山道が荒れるなど、気になることもたくさんあると思います。そういった活動を通じて多くの人が、自分たちが歩く道の保全も考えてもらえるといいですよね。

花谷:本当にそうですね。そのためには自治体が主導するよりも、やはり山に登る人たちが自分たちでお金や労力を少しずつ提供することが大きな力になる。その活動を取りまとめるような仕組みや団体が必要だと思っていて、去年から南アルプスエリアを中心に活動しています。未来に向けて、色々な人たちが関わって環境保全できる仕組みを作っていきたいと思います。

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登山家 花谷泰広さん

日本山岳ガイド協会認定・山岳ガイド

グローバルに活躍する登山家。ヒマラヤや南米など多くの登山に挑戦。現在は山岳界の発展を願い、後進の育成を目指したプロジェクト「ヒマラヤキャンプ」の主宰や、登山道の環境保全活動に取り組むなど精力的に活動中。

味の素(株)スポーツニュートリション部 開発企画グループ 山田敏之

薬剤師、スポーツファーマシスト

大学院薬学研究科を卒業後、医薬品の研究、営業企画、プロダクトマネージャーなどを経て、2015年より現職。スポーツシーンにおけるアミノ酸の効果・有用性を臨床試験などで科学的に検証する業務を担当。2020年より「アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ」を立ち上げ、部活生、アスリート、スポーツ愛好家など、スポーツに真剣に取り組む方へ、アミノ酸の価値ある情報を発信中。

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