[特別対談]マラソン前編:パフォーマンスを最大化するトレーニングと食生活

[特別対談]マラソン前編:パフォーマンスを最大化するトレーニングと食生活

健康で豊かな毎日を送るために欠かせない、適度な運動。部活で毎日スポーツする人も、マラソン大会出場を目指して週に数日走る人も、重要なのは日常的なトレーニングと食事です。しかし、実際にどのぐらいの強度で練習すればいいのか、どんな食事を摂れば良いのか、理解するのは簡単ではありません。

 

今回は第一線で活躍するストレングス&コンディショニングコーチと公認スポーツ栄養士にインタビュー。日常生活において心掛けたいことや、運動時に気を付けたいポイントなどをお聞きしました。練習や本番で最大限に力を発揮するため、必要な正しい知識を身につけて、スポーツに活かしましょう。

[インタビュー]
NSCAジャパン ストレングス&コンディショニングコーチ 渡部一郎さん
管理栄養士・公認スポーツ栄養士 田澤梓さん

自分のカラダをしっかり気遣う

――男性の長距離ランナー(大学生、172cm、60kg)を想定した場合、健康的なランニングを普段から行うために、日々のカラダのケアはどんな点を意識したら良いですか?

渡部:まず走れることが大事なので、いかに準備するかが大切です。毎日同じ状態を作ってあげる。具体的には、ウォーミングアップ、運動前のケア、睡眠ですね。これらの要素を常に良い状態にしてあげるのが重要です。

トレーニングといっても1日24時間で見ると圧倒的に運動していない時間の方が長い。食事や睡眠、私生活でいかに自分のカラダを気遣えるかが重要になります。食事に関してもトレーニング効果を最大限にするため、朝昼晩しっかり食べるのが基本ですね。

田澤:日々の食事で心掛けたいのは、自分自身の運動量や生活習慣に合わせた「エネルギー」と「栄養素」を、きちんと摂ること。その上で1食だけに偏るのではなく、3食均等に食事を摂り、カラダの中で定期的にエネルギーと栄養素を補える状態を作るのが重要です。

――朝昼晩の食事の中で、朝食は何を食べたほうが良いなど、意識して摂りたいメニューはありますか?

田澤:睡眠中はエネルギーと栄養素が補給できないので、朝はそれを補うため、炭水化物やたんぱく質中心の食事を推奨します。また、脱水しているので水分摂取も重要なポイント。さらに長距離選手だと酸素を運ぶ役割をするヘモグロビンの構成要素である栄養素の“鉄”が必要で、鉄の吸収率は1日の中で朝が一番高いため、朝食には鉄の多いものを食べると良いと思います。

昼間は、午後からの練習に向けて、十分なエネルギーと栄養素を補給しなければいけません。炭水化物やたんぱく質を軸として、主食・主菜・副菜・乳製品・果物を揃えた食事が必要と言われています。夜は練習後を想定すると、なるべく早く食べるのが大事。その後は動かないので、消化・吸収が良いものをオススメしています。

渡部:食事を摂るタイミングは、経験上、選手によりますね。練習の2時間前に食べている選手もいれば、30分前に食べて動ける選手もいる。色々試してみて、上手くいかなかったら変える。自分にとって適切なタイミングを見つけるのが大切ですね。

体調が良いと感じる食べ方を見つける

――筋トレを含めたトレーニング時に特に心がけたいこと、重要になる食事を教えてください。

渡部:目的に応じたトレーニングをすることですね。例えば、筋肉をつけたいなら、どれだけの“重り”を持って行うかが重要。自体重だけだと負荷が不十分で、大学生年代でスクワットを10回して、良い負荷になることはほぼありません。回数を増やしても身につくのは持久力で、筋力が上がるわけではない。これだと、目的に応じたトレーニングができていないことになります。

休息も大事な要素で、セット間の休息をある程度取らないと、結局数をただこなしているのと同じになる。1セット目は比較的軽めの重りを使い、最後の2~3回は重いものを使う。休息を挟んで、2セット目・3セット目と進めていけば筋力も上がってきます。長距離選手なら、一週間に1~2回ウェイトトレーニングする日を作ってあげれば良いと思います。

田澤:目的によりますが、筋トレのような負荷のかかるトレーニングをする際は、エネルギー収支がプラスにならないと筋肉はつきません。消費するエネルギー量をカバーする、エネルギーと栄養素の摂取が大切です。具体的には、筋肉の材料になるたんぱく質と、エネルギーを作るために必要なビタミンを摂る必要がありますね。

ビタミンと聞くと「野菜かな?」とイメ―ジされるかもしれませんが、ビタミンB群に限っては豚肉やウナギ・お魚、主菜となるようなものにより多く含まれています。対象者の方くらいの年齢と体重なら、1食ごとにお肉なら130~140gくらいが目安。お肉以外にも、魚、卵、乳製品、大豆製品など、主菜になるおかずを1食で1品~2品は入れるようにします。必要なたんぱく質は大体、体重1kgあたり1.2~2.0gと言われます。ビタミンに関してはエネルギー1,000 kcalあたり0.6mgなど基準があるので、たくさん運動してたくさんエネルギーを消費すれば、その分多くの栄養素を摂る必要があります。総合的に見て、体重が減らないように食事するのが重要ですね。

――筋肉痛が起きた時は翌日もトレーニングを続けた方がいいのか、または休んだ方がいいのか迷う人も多いと思います。アドバイスはありますか?

渡部:筋肉痛があっても筋肉自体は2~3日後に回復します。血液を循環させて温めると、ある程度痛みはとれるので、そのタイミングであればパフォーマンスを落とさずトレーニングできると思います。痛みが激しくてできない時は、2日目くらいから普通に練習して大丈夫でしょう。

――持久力向上に役立つメニューというのもよく聞きますが、実際にスタミナを切らさないために摂っておきたいものはありますか?

田澤:炭水化物をしっかり摂ってほしいですね。ただ、炭水化物はカラダの中で水とくっつくため体重が増えます。長距離ランナーだと体重が重くなるのが嫌な方もいるので、そういう方は、炭水化物をたくさん摂らなくても、たんぱく質・脂質を組み合わせてエネルギーを蓄える食事法も推奨しています。必要なら、簡単に摂れるゼリー状のものを利用するなど、ご自身の体調が良いと感じる食べ方を見つけることが重要だと思います。

『前編』では日常生活を中心としたトレーニングの考え方、食生活で気を付けたい点をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
『後編』では試合・大会に向けてのコンディショニングや1日に必要なエネルギー量や栄養素量をカバーする模範的な食事メニューを提案します。

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渡部 一郎 わたなべ いちろう

M.A.,CSCS

ネブラスカ大学オマハ校エクササイズサイエンス科にて修士号を取得後、同大学のスポーツパフォーマンス・アシスタントディレクターに就任。サッカー、アメリカンフットボール、野球やバスケットボールなどのチームのS&Cトレーニング考案・指導を長年行う。帰国後、S&C施設にて一般人からトップアスリートまでの動作分析及びトレーニング指導を行い、2017年4月より現職。

田澤梓 たざわ あずさ

管理栄養士・公認スポーツ栄養士

帝京平成大学・日本健康医療専門学校 非常勤講師、中央学院高校野球部管理栄養士。ジュニア~大学生競技スポーツ選手、女性アスリート、妊娠産後期アスリート、スポーツ愛好家へのカラダづくりと食事についてのサポート、食育講演やレシピコラムの執筆を行う。2002年管理栄養士、2015年公認スポーツ栄養士取得。スポーツジム、順天堂大学長距離陸上部での食事相談業務、国立スポーツ科学センター非常勤専門職員を経て現在に至る。

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