理想とするパフォーマンスを発揮するには筋肉を「早めに回復する」ことが大切。では、具体的に何をすればいいか?

理想とするパフォーマンスを発揮するには筋肉を「早めに回復する」ことが大切。では、具体的に何をすればいいか?

あまり慣れていない運動やハードなトレーニングをすると、筋肉はダメージを受けてしまいます。このようなダメージからしっかり回復しておくことは、翌日以降も理想とするパフォーマンスを発揮するのにとても大切なことです。今回は、毎日の運動によって、筋肉がどんなダメージを受けているのか、受けてしまったダメージから早く回復するにはどんなことが大切なのかを見ていきましょう!

1.運動すると筋肉はダメージを受けてしまう!

運動した後の筋肉に適切なケアするためには、まず、最初に、筋肉が運動する時にどのような動きをしているかを知っておくことがとても大切です。

筋肉がものを持ち上げる時に縮もうとする動きのことを「収縮」と呼びます。この収縮は大きく2つに分けられます(図1)。

・筋肉を縮めながら力を発揮する収縮(コンセントリック収縮)
・筋肉を伸ばしながら力を発揮する収縮(エキセントリック収縮)

「コンセントリック運動」は重りなどを持ち上げる運動や、階段や坂を上る運動などにあたります。一方、「エキセントリック運動」は、重りを下ろす運動や、階段や坂を下る運動、切り返してダッシュするなどの運動などです。
どのようなスポーツやトレーニングするかは人それぞれですが、特に筋肉を伸ばす「エキセントリック運動」を行うと、筋肉にダメージが起こりやすいことがわかっています。

図1

筋肉は筋繊維という細長い細胞が束になってできています。この筋繊維はきれいに並んでいますが、続けて筋肉にダメージを与えやすい「エキセントリック運動」をして、筋肉が実際にダメージを受けてしまうと、図2のように筋繊維の列が乱れた状態になってしまいます1)

また、筋肉がダメージを受けると、筋肉痛が起きたり、筋力がさがってしまい2)、さらには、筋肉が張ったり、むくんだり、関節が動かせる範囲が狭くなってしまうことも起きてしまうのです。このような様々なトラブルが起きてしまうと、怪我のリスクが上がり、スキルの習得にも悪影響を及ぼします。

図2

また筋肉がダメージを受けることで、ダメージを受けた所に炎症(カラダの一部位が赤くなったり、はれたりすること)が起こってします。このような状態になると、運動する時に必要なエネルギー源であり、筋肉の中に蓄えられている糖質(グリコーゲン)が、運動して減ってしまった後に、元の量に戻ることが難しくなってしまいます3)。毎日続けて運動すると、疲れが溜まりやすくなります。筋肉のダメージが、トラブルを起こしてしまう原因の一つと考えられています。

スポーツする人にとって、もっと切実な問題は、筋肉がダメージを受けてしまうと、理想的なパフォーマンスを発揮することが難しいとも言われており4)、テクニック面にも悪影響を与えてしまうことがわかっています。
したがって、筋肉が受けてしまうダメージからどのようにうまく回復していくか、このことが、次の日もいつもと同じようにトレーニングをしたり、大切な試合やレースで自分の理想とするパフォーマンスを発揮したりするために、とても大切なのです。

1) Raastad T, et al. Med Sci Sports Exerc. 2010; 42(1): 86-95
2) Shimomura Y, et al. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2010; 20(3): 236-44
3) Costil DL, et al. J Appl Physiol 1990; 69(l): 46-50
4) Leite CMF, et al. Hum Mov Sci. 2019 Oct; 67: 102504

2.ダメージを受けた筋肉が回復するのには時間がかかる

筋肉がかなり強いダメージを受けてしまうと、元通りに治るまでには数日~2週間近くかかってしまうことがあるといわれています。そのため、毎日トレーニングする時には、次の日や、試合やレースなどの本番に向けて、筋肉の調子を、目指す状態にしておくよう、いつも気を付けておくことが重要です。そのためには、トレーニングが終わったら、できるだけ早く回復できるよう、こまめなケアをしておく必要があります。では次に、筋肉が受けるダメージと、その後どのように回復していくか、カラダの中の変化を詳しくみてみましょう。

運動して筋肉がダメージを受けてしまうと、前にも説明したように、炎症が起きてしまいます5)(図3)。特に強いダメージを受けてしまうと、炎症がとても強く起きてしまい、さらにダメージを筋肉に与えてしまいます。とてもきつい運動をしたり、長い時間トレーニングしたり、普段からやり慣れていないようなトレーニングをした後は、いつもよりカラダのあちこちが痛くなったり、いつも以上に疲れてしまったりすることがありませんか?それは、カラダの中で炎症が起こっている可能性があります。

図3

以上のことから、毎日トレーニングする場合は、自分に合ったトレーニングの内容を組み合わせてみるなど、普段から筋肉にあまりダメージがかからないようにしておく工夫や努力をすることが大切です。また、大事な試合やレースの前は、強いトレーニングをしすぎないことも重要なポイントです。

5) Peake J, et al. Exerc Immunol Rev. 2005; 11: 64-85

3.筋肉を元通りに回復させるには、タンパク質を新しく作り出すのがポイント!

筋肉はダメージを受けると壊されてしまいます。したがって、壊されたものの代わりに、新しい筋肉を作り出す必要があります(図4)。

筋肉を作っている細胞には、タンパク質が沢山含まれています。この細胞に多く含まれているタンパク質は、アクチンやミオシンといい、運動するときの筋肉が縮む時に働くタンパク質です。

壊れた筋肉の細胞をもう一度作り出すためには、その細胞の材料になるタンパク質を新しく作り出すことがどうしても必要になります。

私たちのカラダのタンパク質は、20種類のアミノ酸で出来ています。また、アミノ酸は二つに分けることができ、「カラダの中で作ることができないため、食事などからとる必要のある9種類の必須アミノ酸」と、「カラダの中で作ることのできる11種類の非必須アミノ酸」に分けられます。これらの中で、筋肉のタンパク質を作るのに役立つのが、9種類の必須アミノ酸です。

また、アミノ酸は、単に筋肉のタンパク質を作る材料として使われるだけではないことが分かっています。筋肉のタンパク質を新しく作り出すには、スイッチがあることが知られています6)。特に、アミノ酸の中でも、このスイッチを入れる役割をしているのが、必須アミノ酸の1つである「ロイシン」というアミノ酸であることが知られています。

図4

以上のことから、 運動後の筋肉の回復には、必須アミノ酸やロイシンを多く含むたんぱく質やアミノ酸が役立ちます。

6) Ge Y, et al. Am J Physiol Cell Physiol 2009; 297: C1434–44

4.まとめ

早めに筋肉を回復させ、次のトレーニングや試合やレースに向けて万全の体調で臨むためには、以下のポイントを知っておくことが大切です。

  • ・筋肉を伸ばす「エキセントリック運動」は、筋肉にダメージを起こしやすい
  • ・筋肉がダメージを受けてしまうと、次の日も続けてトレーニングしたり、理想的なパフォーマンスを発揮したりすることが難しくなる
  • ・ダメージを受けてしまった筋肉が元通り回復するには時間がかかる
  • ・筋肉を回復するにはタンパク質を新しく作り出すことが大切
  • ・筋肉のタンパク質の作るには、必須アミノ酸やロイシンを多く含むたんぱく質やアミノ酸の活用も良い

運動やトレーニングは“やって終わり”ではありません。やった後にどのようなケアをすれば、筋肉が早めに元通りになるかをよく考えながら十分に行うことが大切です。このことは、自分のカラダを知ることにも、理想のパフォーマンスを発揮することにもつながります。正しい知識を学んで活用し、運動から受けるダメージからできるだけ早めに回復して、理想とするパフォーマンスを発揮しましょう(図5)。

図5

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〈監修者〉藤田 聡(ふじた さとし)

藤田 聡(ふじた さとし)
立命館大学 スポーツ健康科学部 教授。 ●2002年南カリフォルニア大学大学院博士号修了 ●博士(運動生理学) ●2006年テキサス大学医学部内科講師、2007年東京大学大学院新領域創成科学研究科特任助教を経て、2009年より立命館大学 ●米国生理学会(APS)や米国栄養学会(ASN)より学会賞を受賞 ●専門は運動生理学、特に運動や栄養摂取による骨格筋の代謝応答 ●監修本に『図解眠れなくなるほど面白い図解 たんぱく質の話』、共著に『体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学』など。

■藤田聡教授研究室について
立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授研究室では、運動と栄養摂取が身体組成やスポーツ・パフォーマンスに及ぼす影響を検討しています。筋肉を分子レベルで検討する基礎研究から、子どもから高齢者までの幅広い年齢・体力を対象とした臨床研究まで、総合的な実験アプローチを用いることで、運動指導の現場に還元できるスポーツ科学のエビデンスの構築に向けて日々研究を続けています。具体的な研究内容として:
1) 特定の機能性食品と運動を組みあわせた際の、脂質代謝や骨格筋タンパク質の代謝に及ぼす影響の検討
2) サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)を目的とした長期的なトレーニング介入や栄養介入の検討
3) ジュニアアスリートのスポーツ・パフォーマンス向上を目的としたトレーニング方法の開発
などが挙げられます。
http://www.fitness-lab.net

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