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脂質をエネルギー源として活用し、持久力をアップ!ミトコンドリアの働きと増やし方
運動時の主なエネルギー源は糖質(グリコーゲン)と脂質
私たちのカラダの中では、毎日の食事から摂る糖質や脂質がもつエネルギーを利用して、生命活動を維持したり、運動をおこなったりしています。
運動強度によるエネルギー源の違い
図1

図1は、運動をどれくらいハードに行うかで、カラダの中で使われるエネルギー源がどのように違うのかを示したものです1)。
歩くくらいの軽い運動をすると、主に利用されるのは、脂質の一つである脂肪酸というものです。ところが、息が上がってしまうくらいのきつめの運動をすると、筋肉に保存されている糖質(グリコーゲン)を主なエネルギー源として使います。
グリコーゲンの貯蔵量
エネルギー源である糖質や脂質はカラダの中にどのくらいあるのでしょうか?
食事から摂った糖質は、筋肉や肝臓でグリコーゲンとして蓄えられます。このグリコーゲンの量は、人それぞれ筋肉量などによって異なりますが、一般の人より多いと言われるアスリートでも、およそ2,000kcalしか蓄えられないのです。フルマラソンを走るには、およそ2,500kcalのエネルギーが必要だと言われています。したがって、糖質だけを使った場合には、マラソンの途中で糖質がなくなってしまい、それ以上走ることができなくなってしまいます。
脂質の貯蔵量
脂質は、ご存知の通り脂肪として蓄えられていますが、一般成人で体重60kg、体脂肪率15%の場合、約9キロもの量が蓄えられており、エネルギー量として約65,000kcal(1gあたり7.2kcalとして計算)です。これは、グリコーゲンと比べると30倍以上ものエネルギー量です。
つまり、運動時に、カラダの中にある糖質だけでなく、脂質を活用することが出来れば、エネルギー切れとならずに、持久力がアップする可能性があるのです。
1) Romijn JA, Am J Physiol. 1993 Sep;265 (3 Pt 1): E380-91.
糖質や脂質を使うためにはミトコンドリアの働きが大切
では、カラダの中ではどのようにして糖質や脂質を使っているのでしょうか。
糖質や脂質がエネルギー源として使われることを説明しましたが、カラダの中では糖質や脂質をそのまま使っているのではなく、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる物質に作りかえています。糖質や脂質からこのATPを作り出す工場として働くのが細胞の中にある「ミトコンドリア」と呼ばれる器官です2)。(図2)
図2


2) Turcotte LP, Am J Physiol. 1992 Jun; 262 (6 Pt 1): E791-9.
ミトコンドリアの働きを高めることで持久力が高まる
筋肉にあるミトコンドリアは、マラソン選手のようなトレーニング行うことで、大きくなり、数も増えます。このように筋肉の中のミトコンドリアが増えると、運動する時に脂質をエネルギー源としてもっと使えるようになります。運動する時に、脂質を主にエネルギー源として使うことで、カラダの中に限られた量しかないグリコーゲンを節約(温存)することができます。(図3)
図3

持久力をもっと上げたい、もっと理想的なパフォーマンスを発揮したいなら、筋肉のミトコンドリアを増やすことが必要です。カラダの中で脂質をエネルギー源として利用できるようになると、糖質がなくなってしまうことを防ぐことができ、運動をより長く続けることができるようになる。つまり、持久力がアップするのです。
糖質・脂質をエネルギー源として活用して持久力をアップ – ミトコンドリアの働き
カラダの中のエネルギー源を有効に活用し、持久力を高めるためには、以下のポイントが大切です。
- ・食事から摂る糖質や脂質がエネルギー源として使われる
- ・きつめの運動をすると、糖質が主に使われてなくなり、疲れてしまう
- ・カラダに蓄えている糖質のエネルギー量は少なく、脂質のエネルギー量は多い
- ・糖質や脂質を使うためには、筋肉のミトコンドリアの働きが大切
- ・筋肉のミトコンドリアが増えると、脂質をエネルギー源としてもっと活用できるようになる
- ・脂質の活用が増えると、糖質を温存できるため、持久力を上げることに役立つ
筋肉のミトコンドリアが増えると、カラダの中の脂質をもっと活用できるようになります。理想的なパフォーマンスを発揮するため、運動する目的に合わせて、持久力を上げるための方法を科学的に考えてみましょう。
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パフォーマンスとエネルギー利用の関係!『シスチン』は脂質をエネルギー源として活用し、疲れを軽くしてくれる
〈監修者〉寺田 新(てらだ しん)

早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了(博士(人間科学))。日本学術振興会・PD特別研究員、ワシントン大学医学部・研究員、三共株式会社・研究員、早稲田大学先端科学健康医療融合研究機構・講師、日清オイリオグループ株式会社中央研究所・主管を経て2023年より東京大学大学院総合文化研究科・教授。





