ベストなコンディションにするための食事と栄養(パートⅠ:コンディション把握)

ベストなコンディションにするための食事と栄養(パートⅠ)

より良いパフォーマンスを発揮するためにはカラダを良い状態に整えなければなりません。スポーツではよく『コンディション』や『コンディショニング』という言葉を使いますが、みなさんはその言葉の意味を考えてみたことはあるでしょうか?

 

『コンディション』は言葉の意味の通り、その時の「状態」を示す言葉です。コンディションは、トレーニング内容、食事・栄養、精神面などの影響を受け、日々変化しています。『コンディショニング』は、スポーツにおいて、より高いパフォーマンス発揮、より良い成績を目指して、カラダや精神を整えることを意味しています。つまり、「ベストパフォーマンス」はコンディショニングを行うことで得られると言っても過言ではないでしょう。

 

このコンテンツでは、様々なコンディショニングに対して、食事・栄養がどのように関わるかを学んでみましょう。そして、自分に必要なコンディショニングを考え、取り入れてみましょう。

1.コンディションの把握

コンディショニングを行うためには、まずコンディションを知らなければなりません。みなさんは日々のコンディションをどのように把握していますか?

コンディションを知るためには何をしなければならないか?と考えると、何か特別なことをしなければならないように思いますが、そのようなことはありません。以下に日常生活でできるコンディションを知る方法の一部を記します。

このように、特別な機器を使用しなくても、コンディションを把握することは可能です。自分自身の状況に合わせて、指標を選択すると良いでしょう。

さて、コンディション把握の基本は毎日の体重測定です。測定は、毎日同じ時間(なるべく起床後)、排尿後、同じ服装(裸に近い方が良い)で行いましょう。体重(体脂肪)の増減を把握することで運動量と食事量のバランスを大まかに把握することができます。短期的な変動は、主に体水分の出入りなので気にし過ぎることはよくありませんが、中長期 (1ヶ月以上) 的に見た変動は、体組成の変動として捉えていきます。週単位、月単位で増減を見て、自分が設定した体重との比較を行い、食事量を見直していくことが大切になります。

激しいトレーニングや試合が続くと疲労が蓄積し、回復が遅れてしまうようなこともあります。「疲れた」という感覚的なものを感じますが、実際にどのような状態なのか?を知ることでその対応が可能となります。

例えば、脱水は疲労の原因となりますが、尿の色を確認することで脱水状況をある程度把握することができます。薄黄色よりもより濃い色 (茶色) をしていれば脱水している証拠となります。また、便性状を確認することで、消化器の状況を把握することもできます。いわゆるバナナうんち以外であれば、消化管に何かしらの負担 (疲労、精神的ストレスなど) がかかっていることが推測できます。軟便や下痢であれば、摂取した食事が十分に消化吸収されていないと考えられます。いつもより多めに水分を摂取したり、食事の内容を変えるなどの対処をすることができます。

このように、特別な機器を使用しなくても、コンディションを把握することができ、日々のコンディショニングに繋がって行くのです。

多くのアスリートは、記録用紙やアプリなどを活用し、上述したコンディション指標を選択して毎日記録しています。加えて、練習量なども記録するとより詳細なコンディションの把握につながるでしょう。

これらの記録は習慣化することが大切で、何かしらの変化があった場合に「なぜそのような変化があったのか?」を考察して、対策や修正を行うことで、コンディショニングに役立てていきます。

スポーツ栄養学的には、コンディションを把握するための指標を用いて、食事量や内容を考えていくことになります。ベストコンディションを目指すために、毎日の測定・記録を行い、できるだけ規則正しい生活を心がけてみましょう。また、食事や補食のコンディションへの影響についても考えてみましょう。

〈監修者〉佐々木 将太(ささき しょうた)

佐々木将太(ささき しょうた)
北海道文教大学 人間科学部 健康栄養学科 講師。
京都府立大学大学院生命科学研究科応用生命科学専攻博士後期課程単位取得退学 (2011) 、博士 (学術) 、帯広大谷短期大学助教を経て、2019年より現職。公認スポーツ栄養士、管理栄養士。月刊スキーグラフィック「スキーヤーのための栄養学」監修。

これまでにスピードスケート、アイスホッケーに取り組むジュニアおよび女子アスリートを中心に栄養サポートを実施。現在は、管理栄養士を目指す学生と高校野球および陸上競技選手に栄養サポートを実施中。展開の途上ではあるが、寒冷環境で行うスポーツに特化した栄養摂取方法を模索した研究にも取り組む。スポーツ栄養分野の研究と現場の架け橋を目指す。

関連記事関連記事