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[アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ 特別対談]女子大学サッカー【後編】栄養補給も、試合に向けた準備のひとつ
毎日の練習の中で、疲労が蓄積しやすいサッカー。スキルや体力向上を意識しながら、大事な試合に調子を合わせるのは簡単ではありません。中・長期的なスケジュールを考慮したうえでの準備や、正しい知識に沿った調整が大切です。学生の場合は、移動時の過ごし方や食事の調達なども、試合のパフォーマンスを左右する要因になります...
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【ダイジェスト動画】環太平洋大学 体育学部体育学科講師 江波戸智希×公認スポーツ栄養士 仲西加奈「女子サッカー選手にとっての正しい調整とは」
早稲田大学女子サッカー部のトレーナーを経て、現在環太平洋大学女子サッカー部の選手育成を行う江波戸智希さんと、大学サッカー部選手の個別栄養指導などを手掛け、現在株式会社LEOCで栄養指導を行う仲西加奈さんにインタビュー。サッカーに不可欠な栄養補給と休息、合宿などのハードなトレーニングに臨む際の準備や...
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【動画前編】練習・食事・休息の3つを適切に揃える/環太平洋大学 体育学部体育学科講師 江波戸智希×公認スポーツ栄養士 仲西加奈
「なでしこジャパン」の活躍などにより近年大きな注目を集める女子サッカー。90分間の試合の中で、瞬発力・柔軟性・体幹など様々な身体能力が要求されるスポーツであり、競技力の向上には日々の栄養補給やトレーニングが欠かせません。そこで今回は、...
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【動画後編】全員同じではなく個別性が重要/環太平洋大学 体育学部体育学科講師 江波戸智希×公認スポーツ栄養士 仲西加奈
環太平洋大学 体育学部体育学科講師の江波戸智希さんと、学生時代にフィギュアスケート選手として活躍し、現在は公認スポーツ栄養士として大学やプロチームで選手を支える仲西加奈さんに、女子サッカー選手、特に学生選手にスポットを当ててお話を聞く今回の対...
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[特別対談]サッカー前編:良い睡眠と良い食事。 日々のコンディショニングがカラダの土台を作る
サッカーであれば、年中試合が可能なため、季節にあわせたコンディショニングが必要で、高校生などの育成年代であれば、なおさら。成長のための栄養と、激しい運動量をこなすエネルギー源となる食事。競技レベルを上げる練習に、筋力を高めるトレーニングと、日々の…
[アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ 特別対談]女子大学サッカー【前編】フィジカル強化のためにはトレーニング、栄養、休息を1セットで考える
[インタビュー]
環太平洋大学 体育学部体育学科講師 江波戸智希さん
公認スポーツ栄養士 管理栄養士 仲西加奈さん
疲労が溜まりやすいサッカーは休息・栄養補給もトレーニングの1つ
――サッカーはエネルギー消費の多いスポーツのため、特に学業と両立している学生は、効率の良い栄養補給が欠かせません。仮に女子大学生サッカー部員(160cm 57kg、女性)の場合、毎日の食事で欠かせない栄養素や食事のタイミングを教えてください。
仲西:まず「バランスの整った食事」が最も重要です。具体的に言えば、主食のご飯やパン、主菜の肉・魚、卵・豆製品、副菜の野菜類、果物と乳製品。この5つをバランス良く揃えることが基本です。大学生で午後に練習があれば、昼食で糖質主体のものをしっかり食べてエネルギー補給することが大切です。
――毎日の練習に良いコンディションで臨むため、日常生活で意識したいことはありますか
江波戸:大前提として「トレーニング」「食事」「休息」の3つが適切にできていないと、パフォーマンスは上がりません。私は「休息もトレーニングの一つ」と指導していますが、中でも特に重要なのが睡眠です。研究でも、パフォーマンス向上や怪我予防に睡眠が影響しているという結果が出ているので軽視できません。
最低でも8時間程度の睡眠時間が必要ですが、大学生の場合、授業・課題・アルバイトなどで忙しく、確保できないこともあるでしょう。その場合は昼寝が効果的です。通常なら15分~20分ぐらい、夜間バイトなどで全然寝ていなければ90分までを上限に。夜の睡眠の質が下がらないよう、15時前までには済ませるように声がけしています。
仲西:睡眠はカラダ作りにも大きく関係していて、たんぱく質やエネルギーを摂取して筋トレしても、充分な休息がないと筋肉は増えません。また、夜更かしして朝起きれず、朝食を食べ損なうと、1日に必要なエネルギー・栄養素が不足するので、どちらも欠かすことができません。
江波戸:最近の研究でも、朝食にたんぱく質を多く摂ることで筋量が増加する、という報告がありました。プロテインを朝に摂るのもトレンドですが、オススメのたんぱく質の摂り方などありますか?
仲西:卵が1番摂りやすいですね。朝ごはんを自炊している場合、2~3日分のゆで卵を作り置きしておき、朝起きたらご飯と一緒に塩をかけて食べる。コンビニを利用する場合も、主食のおにぎりやパンは必ず食べるようにして、そこに鮭やサバ、肉など、少量でもたんぱく源が入った具を選ぶと良いと思います。
――疲労に対するリカバリーやコンディション調整の方法を教えてください。
江波戸:まず栄養面では、運動後すぐに糖質とたんぱく質を摂取しましょう。クーリングダウンの時も、ストレッチやランニングよりも前に栄養補給を優先したいところです。練習後すぐにオレンジジュースを(アミノ酸のサプリメントを入れて)飲むのもいいでしょう。長時間食事が摂れないとリカバリーに影響するので、早めの栄養補給が重要です。
仲西:普段、試合を想定したような強度の高い練習の後に、ジョグやストレッチなどの軽い運動をすることが多いと思います。そのクーリングダウンの時間を活用して栄養補給をすれば、早めの回復が期待できます。ただ、走り込みなどのハードな練習後は、すぐに食べられない選手もいるので、食べられる状態になってから補給するのも一つの手法です。
江波戸:トレーニング、栄養、休息の3つが繋がり続けることが大切ですね。トレーニング指導だけでは不充分なので、栄養指導とリカバリー指導の連携は不可欠だと思います。
強度の高い練習やトレーニングには段階を踏んだ準備を
――合宿などカラダ作りをテーマにした強度の高い練習時に、意識して増やしたほうが良い練習メニューはありますか。
江波戸:練習前には、これから使う関節や筋肉に対する適切な準備が必要です。専門的には『コレクティブ・エクササイズ』と言って、4つの段階を踏んでカラダを整え、準備します。1つ目が「抑制」で、フォームローラーなどでカラダの緊張をほぐす。2つ目は「伸長」で、いわゆるストレッチ。3つ目が「アクティベート(活性)」で筋肉を収縮させて、筋肉に動きを覚えさせていく。4つ目が全身を連動させ、正しいカラダの使い方にするための「統合」です。
いきなり強度の高いトレーニングをしたり、練習量を増やしたりすると非常に危険で、怪我をする確率が高くなります。トレーニング強度を上げるためには、1年間の計画の中に組み込みんで、強度が高い練習までカラダを徐々にならしていくことが大切です。
――強度の高いトレーニング時は、やはり怪我が怖いですよね。
江波戸:怪我も怖いですが、高強度の練習に取り組んで、その強度が続かない(維持できない)ことも問題です。せっかくきつい練習をしても強度が続かなければ(維持できなければ)効果がないので。メンタルを強くする目的ならそれでもいいですが、トレーニング回数・運動時間・休息時間など、その日に合わせた適切なトレーニング設定が決め手になります。
仲西:地方での合宿も多いと思うので、普段と違う地元の名物料理や食材を食べることも、モチベーションの維持に役立ちますね。楽しんで食事できるような環境作りも大切です。
江波戸:合宿で集中して練習すると、やはり食欲は落ちてきますよね。そういう時は食べ物やドリンクに甘いもののバリエーションを入れるなど、できるだけ食べられるように工夫することも必要です。
仲西:甘いものは別腹という選手もいますからね。決して甘いものが悪いわけではないので、うまく糖質補給の一つに使えたらいいと思います。
――筋力強化がメインの時期に、摂り入れた方が良い栄養素を教えてください。
仲西:筋力強化のためにも、ベースになるのはやはりバランスの良い食事です。特にカラダを作る材料となるたんぱく質は、一度にたくさん摂っても吸収しきれないので、朝・昼・晩とコンスタントに摂って欲しいですね。
また、たんぱく質の代謝に関わるのがビタミンB6、筋合成に関わるのがビタミンDです。ビタミンB6は肉や魚に多く含まれており、ビタミンDは魚に多く含まれています。ビタミンB6はバナナにも入っているので、例えばバナナスムージーにすれば牛乳のたんぱく質とバナナの糖質を効率良く摂取でき、練習後のリカバリーにもオススメです。
気にするべきなのは、見た目よりも中身の変化
――女子選手だと、太るのを気にして十分に食事を摂らない人もいると思います。現場ではどのように指導されていますか?
仲西:「太る」に関する基準を、見た目ではなく、体重と体脂肪に切り替えてもらいたいですね。「何が増えて何が減っているのか」、目を背けずに見て欲しい。日々の体重や筋肉量・体脂肪率などの体組成を定期的に測って、体重増減に一喜一憂するのでなく、長期的な目で見ていくことが大事です。
消費したエネルギー分よりも食べるから体重が増えるわけで、エネルギーの摂取量と消費量がイーブンであれば体重は増えません。いたずらに減らそうとするのではなく、消費分に見合った食事を摂るのが重要だと伝えています。
江波戸:カラダが大きくなるのを嫌がる選手もいますが、その点はどう意識づけされていますか?
仲西:サッカー選手として体重・体脂肪率がベストでも、見た目を気にして痩せたがる選手もいます。でも、「キレイを選ぶか?アスリートとしてのパフォーマンスを選ぶか?」であれば、選手はおそらく競技力向上を選ぶと思う。目的を再認識することで、選手も納得して栄養補給ができるものだと私は思っています。
カラダの線が細く当たり負けをしてしまうなど、戦略的に増量が必要なのに、見た目を気にして増量したくないという選手もいます。そこも、選手が納得して取り組めるように、育成戦略を立てているコーチと、選手と栄養士が一緒に話し合うこともあります。
『前編』では、練習のパフォーマンスを上げるための休息の取り方と必要な栄養素、カラダ作りに向けての準備や食事の摂り方について紹介しました。『後編』では、試合に向けたコンディショニングと当日~翌日のリカバリー方法、一日に必要なエネルギー・栄養素をカバーする模範的な食事メニューをご紹介します。
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環太平洋大学 体育学部体育学科 講師 江波戸智希さん
JSPO-AT、NSCA-CSCS, JFA公認B級コーチ,AFC Fitness Coaching Certificate Level 2
順天堂大学卒業、早稲田大学大学院修士課程修了。早稲田大学ア式蹴球部女子、ジェフ千葉アカデミーでフィジカルコーチを歴任。2019年より現職。現在も東京ヴェルディアカデミーフィジカルアドバイザー、JFAフィジカルフィットネスプロジェクトチューター(サポートメンバー)。岡山県スポーツ協会医科学サポートを兼任。男女プロサッカー選手を多数育成することに貢献している。
公認スポーツ栄養士 仲西加奈さん
株式会社LEOC
公認スポーツ栄養士、管理栄養士
小学2年生~大学生までフィギュアスケート選手として活躍。帝塚山学院大学卒業後、関西大学大学院にて博士前期課程を修了、株式会社LEOCに入社。運動部学生寮の栄養管理やプロ野球チームの栄養サポートを経て、現在は大学サッカー部や陸上部、プロサッカーチームなど様々な競技をサポート。自身が選手であった経験から、対象者に寄り添った栄養サポートを心がける。