ベストなコンディションにするための食事と栄養(パートⅣ:お腹のコンディショニング)

ベストなコンディションにするための食事と栄養(パートⅠ)

より良いパフォーマンスを発揮するためにはカラダを良い状態に整えなければなりません。スポーツではよく『コンディション』や『コンディショニング』という言葉を使いますが、みなさんはその言葉の意味を考えてみたことはあるでしょうか?

 

『コンディション』は言葉の意味の通り、その時の「状態」を示す言葉です。コンディションは、トレーニング内容、食事・栄養、精神面などの影響を受け、日々変化しています。『コンディショニング』は、スポーツにおいて、より高いパフォーマンス発揮、より良い成績を目指して、カラダや精神を整えることを意味しています。つまり、「ベストパフォーマンス」はコンディショニングを行うことで得られると言っても過言ではないでしょう。

 

このコンテンツでは、様々なコンディショニングに対して、食事・栄養がどのように関わるかを学んでみましょう。そして、自分に必要なコンディショニングを考え、取り入れてみましょう。

4.お腹(腸)のコンディショニング

マラソンのような長い時間の運動を行うと、筋肉だけでなく内臓もダメージを受けることが知られています。食べ物の消化吸収が行われる消化管も例外ではなく、運動による影響を受けるのです。そのため、運動による影響を少なくするために、普段からのお腹のコンディショニングが大事です。

お腹、腸のコンディショニングとして、プレバイオティクスとプロバイオティクスという考え方があります。プレバイオティクスは、難消化性食品 (消化されづらい炭水化物) を摂取することで大腸内の細菌の増殖および活性を変化させることで健康を改善することです。対して、プロバイオティクスは、有用な細菌を摂取することで腸内環境のバランスを改善し、健康を改善していくことです 。つまり、プレバイオティクスは、もともと存在している良い腸内細菌に餌を与えて元気にする方法、プロバイオティクスは有用な腸内細菌を摂取して腸内環境を良くする方法と考えて良いでしょう。

普段の食生活において行うお腹(特に腸)のコンディショニングとしては、ヨーグルトや納豆などの発酵食品、野菜、きのこ、海藻に含まれる食物繊維を取り入れていくと良いでしょう。腸内環境は、短期間で変わるものではなく長い目で見て、毎日コツコツ取組んでいくことが重要です。

一方で、注意も必要です。食物繊維は摂取しすぎると便秘の原因になったり、食事量を減らしてしまう可能性があるので、1回に多量の摂取は禁物です。また、ヨーグルトなどの乳製品の摂取で、下痢や軟便を引き起こしてしまう方もいます。自分自身に合った食品を見つけて、お腹のコンディショニングに取組んでみましょう。

運動前のお腹のコンディショニングも考える必要があります。運動前に食品をたくさん摂取し、運動中にお腹が痛くなる・・・という経験をしている方も多いかと思います。消化吸収が行われているときには、消化管に血液が集まります。食後すぐに運動を開始してしまうと、筋肉でも血液が必要となるため、消化管と筋肉で血液の取り合いとなり、消化管の働きが低下してしまいます。つまり、運動前に食べたものが上手く消化できず、お腹が痛くなったり、気分が悪くなったりしてしまうのです。

運動前の食事時間として、一般的に3~4時間前までに済ませておくことが奨められているのは、消化管での消化吸収の時間を考慮しているためです。消化吸収の能力には個人差があるので、普段の練習や練習試合などで食事時間を調整して確認しておくと良いでしょう。基本的に、運動時間が近づくにつれ、おにぎりやうどんなどの消化の良い物、バナナや果物などに切り替えて行くと良いです。運動30分前であれば、ゼリー飲料やサプリメントなどの活用が良いでしょう。

以上のように、日頃からお腹のコンディショニングや運動に合わせた食べ方を取り入れ、さらに良いパフォーマンスを目指しましょう。

※運動後のお腹のダメージに関するヒントはこちら

〈監修者〉佐々木 将太(ささき しょうた)

佐々木将太(ささき しょうた)
北海道文教大学 人間科学部 健康栄養学科 講師。
京都府立大学大学院生命科学研究科応用生命科学専攻博士後期課程単位取得退学 (2011) 、博士 (学術) 、帯広大谷短期大学助教を経て、2019年より現職。公認スポーツ栄養士、管理栄養士。月刊スキーグラフィック「スキーヤーのための栄養学」監修。

これまでにスピードスケート、アイスホッケーに取り組むジュニアおよび女子アスリートを中心に栄養サポートを実施。現在は、管理栄養士を目指す学生と高校野球および陸上競技選手に栄養サポートを実施中。展開の途上ではあるが、寒冷環境で行うスポーツに特化した栄養摂取方法を模索した研究にも取り組む。スポーツ栄養分野の研究と現場の架け橋を目指す。

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