[アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ 特別対談] 
 サッカー後編:適切なコンディショニングがピークを高める

[アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ 特別対談]   サッカー後編:適切なコンディショニングがピークを高める

上手なコンディショニングを行うため、高校生のサッカー選手を事例として、トレーニング方法や食事方法を学ぶ今回。実際の試合に向けて、どういった練習・栄養摂取を心がければ良いのか。現場の知識が豊富なトレーニング科学の専門家 松田繁樹さんと、公認スポーツ栄養士 中野ヤスコさんによる特別対談を実施しました。

 

本記事では試合・大会に向けたコンディショニング、休養と試合後のケアをご紹介。疲れを最小限に抑え、試合後も質の良いトレーニングを続けていくための方法を、二人に伺いました。

[インタビュー]
滋賀大学教育学部教授 松田繁樹さん
管理栄養士・公認スポーツ栄養士・調理師 中野ヤスコさん

試合までの一週間を考慮した負荷のかけ方。食事の調整

――サッカーの試合が1週間後にあるとして(例として高校生の男性、175cm 65kg)、練習の負荷のかけ方などをどう変えていくと、パフォーマンスを最大化できるものでしょうか?

松田:以前から言われていますが、試合前はトレーニング負荷を落とし、疲労が残らないようにするのが基本ですね。日曜日に試合だとすれば、筋トレやトレーニングは火曜日・水曜日。試合の前日・前々日は負荷をかなり落とした、戦術・技術練習にするのが通常の考え方です。

睡眠をうまくとれるように試合開始時間から逆算して、数日前から就寝時刻を合わせるのも良いと思います。例えば日曜AM10時に試合開始なら、3時間前には食事を摂るからAM7時ぐらいに朝食を食べる。ならば起床はAM6時になるので、それに合わせていくという手法です。試合前はメンタル調整も必要なので、自分に合ったものを見つけていく必要があるでしょう。

中野:日曜日に試合だとすると、週前半の月曜・火曜はリカバリー。水曜・木曜あたりから普段の食事バランスで、主食を増やしていくのが基本ですね。単純に主食を増やす=ご飯を増やすと思われがちですが、主食の代わりになるものをおかずの中に入れると効率的です。ご飯とジャガイモスープや、塩焼きそばとそうめんの入ったスープ、またパスタを使ったサラダやかぼちゃの煮物など、主食のフォローができる、糖質の多い食材を副菜に加える工夫をすると、選手も負担なく受け入れられると思います。餅やフルーツも糖質が多く、手軽にエネルギーチャージに活用できます。

――試合前日から当日にかけての準備において、食事面で気を付けたい点を教えてください。

中野:前日の夜は、消化の悪い“二大食べちゃダメなもの”があります。一つはカレー系や揚げ物系など脂質の多いもの。もう一つは、普段は摂って欲しいのですが、野菜や海藻類など繊維質の多いものですね。実際に、親御さんが良かれと思って試合当日の朝に具だくさんの豚汁を食べさせて、お腹が痛くなった選手もいたことがあるので、気を付けて欲しいところです。

豚汁の具材の豚肉の脂と根菜類の食物繊維は、緊張している選手にとっては胃腸の負担が大きい場合があります。

試合当日は、試合の約3時間前に食事量をしっかりと確保する。補食みたいな「軽い朝食」を摂り、意外とちゃんと食べない子が多く、移動やアップでエネルギーが使われてしまって、本番でエネルギー切れになる選手も多いので、「朝食をしっかりと食べる」は基本です。また、夏の場合はビタミン・ミネラル系が汗で出て行きやすいので、それらの補給の意識を高めていく必要がありますね。夏こそ、スープや汁物を活用すると水分や塩分、ミネラル補給になります。

大会当日・前後のコンディショニング方法。回復を効率化するには

――試合直前では、準備運動など怪我をしないために重要だと思います。どのように行えばいいでしょうか?

松田:準備運動は基本的に、動かしながらカラダをほぐす「動的ストレッチング」を取り入れると良いと思います。止まったままで行う静的ストレッチングは、直後のパワーが落ちるので、静的ストレッチングだけというのは避けたほうがいい。筋温と体温を上げることが重要で、ブラジル体操などの動的ストレッチングなら、関節の滑液が出て滑らかにカラダを動かせるようになるし、神経伝達も速くなり、パフォーマンス向上に役立ちます。

時間は10~20分ぐらいが目安。季節によって変える必要もあると思います。夏は気温が高いのであまり長い時間行う必要はないし、冬だと体温を上げるために、より時間がかかる。

ちなみに、柔軟性についてですが、柔軟性を高めると、筋を縮める反射の能力などが落ちてしまって、筋力が落ちるとも言われています。サッカー選手の場合は、柔軟性が低すぎるのは問題ですが、柔軟性を過度に求める必要はないと思います。

中野:試合前、試合中はBCAAや必須アミノ酸などをしっかり摂取するように言っています。特に土・日試合が連続してある時や、1日2試合ある場合は、アミノ酸を上手に活用して疲労回復を早くするよう指導していますね。

――試合中・試合後のコンディショニングに関して、より状態を良くするために気をつけたいことをあげていただけますか。

中野:栄養素としては、糖質がリカバリーに一番良いので、試合にフル出場する選手の場合、ハーフタイムには糖質を入れるように言います。また、試合直後の補食には、糖質とたんぱく質(アミノ酸)の入ったもの、あるいは両方を一度に摂れるものを準備しておくように伝えています。それら一連の流れが、早い疲労回復に繋がるので、「摂れなかった」ではなく、準備することが大事だと伝えています。

試合後には、糖質・たんぱく質・酸っぱいもの(クエン酸など)の3点セットが理想ですね。すぐに食べられるものとしてバナナ、おにぎり、冷たいうどんなど、またサラダチキンやゆで卵、チーズやヨーグルトで手っ取り早くたんぱく質を摂るのも大切です。後はオレンジジュースやカットフルーツなども良いですね。最近はコンビニでも冷凍フルーツがたくさん売られています。試合日は糖質とたんぱく質で埋まってしまうので、試合後の夕食では、摂るタイミングが少ないビタミン・ミネラルを補ってあげると、リカバリーに直結します。

松田:試合後は普段と一緒ですが疲労回復が大事。リカバリーで一番重要なのは休養で、睡眠が大切です。高校生だと朝練などで早く起きなければならず、睡眠時間が少ない選手もいると思いますが、慢性的な睡眠不足は成長ホルモンの分泌を抑えるコルチゾールが出てしまい、カラダづくりには非常にもったいない。まとめて寝るのが難しければ、仮眠・昼寝を10~20分ぐらいとるのも効果はあります。

――翌週に向けて疲労を残さないために、意識したいことなどあったら教えてください。

松田:睡眠の質も大事ですね。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠が交互にやってきて、ノンレム睡眠の時に成長ホルモンがたくさん出る。つまり、深く眠ることが大切。ノンレム睡眠は就寝後、最初が深くて、だんだん浅くなっていくので、最初に深く眠ることが重要です。最近心配なのが、寝る直前までスマホやパソコンを見てしまうこと。寝る1時間前ぐらいには、電化製品をシャットアウトして本を読んだり音楽を聴くなど、睡眠の質を高める努力をした方がいいと思います。

中野:試合翌日に疲れて食欲が落ちる場合も、欠食だけはしないようにして欲しいです。特に朝食は、最低でも糖質とたんぱく質の多い食材を摂りたいですね。乳製品や果物なら食べやすいので、ヨーグルトにバナナを入れるとか、食べやすくて2つの栄養素が入っているものを摂る。特にたんぱく質量が足りなくなりやすいので、食事の準備が難しい場合は、朝食にプロテインを使うのもオススメしています。

――最後にトレーニングや食事面に限らず、伝えたいメッセージがあれば教えてください。

中野:ここでご紹介する食べ方は、理想論です。選手も保護者も忙しい毎日の中で、実際には難しい場面が多いと思います。できなかったと思わずに、「次の食事で一つずつ修正していく」と考えて、少しずつ理想に近づけていってほしいと思います。

あと、親御さんや選手の声で多いのが、「栄養情報があり過ぎて、結局何がいいのかわからない」というものです。親御さんの中には「子どものためにいろいろ調べてみたが、疲れてしまった」という方も多い。一方で「スポーツ専門の栄養士さんに指導してもらえると嬉しい」との声も聞きますので、困った時は公認スポーツ栄養士に相談してみるのも一つの方法だと思います。

松田:選手自身に情報を取捨選択できる能力を付けさせるのも重要ですね。全部頼りきるのではなく、得た情報から何が正しいか判断できる力を付ける。日本で活躍している選手はそういった、「情報収集して適切に判断できる力」を持つ人が多いです。それは、サッカーのプロだけでなくて、現代社会でも必要な能力。課題を見つけて解決する力があれば、その後も自然に伸びるので、スポーツを通してそういった力を付けて行って欲しいと思います。

≪1日の模範的な提案メニュー≫

朝食:トースト(2枚)、イチゴジャム、鶏ハムエッグ、ほうれん草と玉ねぎのコンソメスープ、フルーツ入りコーンフレークヨーグルト、バナナ、豆乳

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朝食は、睡眠時に下がった体温をぐっと上げ、カラダを目覚めさせてくれます。体内時計リセットを促すアミノ酸は、たんぱく質に多く含まれるので、パンやおにぎりだけではなく、肉や魚・卵、乳製品などのたんぱく源も一緒に摂るように心がけましょう。(食欲がわかない場合の工夫として、『梅干しやヨーグルトを少し食べてから食事を摂るといい』と教えてくれたオリンピック選手がいました)

【エネルギー:900kcal】
たんぱく質:44.7g/脂質:22.6g/炭水化物:130.4g/鉄:6.7mg/カルシウム:236mg
PFC=19.9:22.6:58 (%)

昼食:玄米入りご飯(350g)、レバー入りハンバーグ、焼き鮭、さつま芋の甘露煮、ミニトマト、塩ゆでブロッコリー、きんぴら蓮根

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午後からの練習に向けてしっかりとエネルギー補給をしましょう。汗と一緒に流れて不足しがちな鉄は、アスリートにとって大切な栄養素です。いろいろな食材を食べられるといいですね!

【エネルギー:1180kcal】
たんぱく質:45.2g/脂質:26.1g/炭水化物:182.2g/鉄:8.4mg/カルシウム:114mg
PFC=15.3:19.9:61.8 (%)

補食:ちりめんじゃこと大葉のおにぎり(2個)、チーズ

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エネルギーを補給するためには補食が必須です。練習前後には炭水化物を中心にエネルギー補給をすると、疲労回復にもつながります。カルシウムが豊富なちりめんじゃこをおにぎりに混ぜると、食べやすいですね。成長期のアスリートは、特にカルシウムや鉄などのミネラルが多く必要なので、不足しがち。意識しましょう。

【エネルギー:418kcal】
たんぱく質:13.4g/脂質:6.8g/炭水化物:73.1g/鉄:0.9mg/カルシウム:172mg
PFC=12.8:14.6:70 (%)

夕食:玄米入りご飯(400g)、豚肉の生姜焼き、付け合わせ(トマト・レタス・ブロッコリー)、おから入りポテトサラダ、冷奴、あさりのコンソメスープ、オレンジ、牛乳

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1日の中で摂り切れなかった野菜や大豆製品、海藻類、果物などを摂るように意識しましょう。揚げ物やカレーのような油脂の多いメニューの場合は、翌日の朝の食欲に影響が大きく出ますので気をつけてください。食べる時間が遅くなる場合は、「消化のよいもの」を意識します。

【エネルギー:1387kcal】
たんぱく質:61g/脂質:38.1g/炭水化物:188.7g/鉄:8.4mg/カルシウム:322mg
PFC=17.6:24.7:54.4 (%)

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松田繁樹 まつだしげき

松田繁樹 まつだしげき

Ph.D.,CSCS

愛知県瀬戸市出身、滋賀大学教育学部教授、兵庫教育大学大学院(博士課程)教授.博士(学術)、専門はトレーニング科学、測定評価、発育発達、公認サッカーC級コーチ。大学からサッカーを始め、北信越大学サッカー得点王、北信越社会人サッカー得点王、天皇杯、国体にも数回出場。選手引退後、サッカー選手のバランス能力、ジャンプ力、トレーニングを研究。プライオメトリクスに関する連載等を執筆。研究と現場の橋渡しに注力。

中野ヤスコ なかのやすこ

中野ヤスコ なかのやすこ

管理栄養士・公認スポーツ栄養士・調理師

「楽しくおいしく手軽に」をモットーに選手、保護者、指導者、それぞれの立場と環境に考慮した栄養指導を得意とする。陸上実業団チームの海外合宿や世界大会の帯同実績も多い。独自メソッド「スポーツ食育プログラム」を県内の中・高校スポーツチームへ多数展開。静岡県藤枝市青木で健康食堂「くるみキッチンプラス+」を経営し、静岡県内の食材を活用した「健康な食事」のアンテナショップとなるべく食環境整備にも力を注いでいる。株式会社食の学び舎くるみ 代表取締役。

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